抗がん剤治療を受ける方の多くが気になる副作用のひとつに脱毛があります。
髪の毛が抜けていくことは、外見の変化だけでなく、精神的な負担にもつながりやすいものです。
ここでは、脱毛が起こる仕組みや経過、日常生活でできるケア、かつらや帽子などの工夫について詳しくまとめました。
なぜ脱毛が起こるのか?
抗がん薬は、がん細胞の分裂を抑える一方で、体内の「細胞が盛んに分裂している部分」にも影響を及ぼします。
毛髪をつくる毛母細胞もそのひとつであり、抗がん剤の作用によって障害を受けるため脱毛が起こります。
脱毛の程度と関係の深い抗がん剤
薬の種類によって脱毛の程度は大きく異なります。
- 脱毛が起こりやすい薬剤
パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド など - 中程度に起こる薬剤
エンドキサン、オンコビン、ブレオマイシン など - 比較的軽度な薬剤
5-FU、カルボプラチン、オキサリプラチン など
脱毛の経過と回復の目安
- 治療開始から 2~3週間前後 で抜け始めることが多いです。
- 抗がん剤終了後しばらくしてから発毛が再開し、約8か月~1年でショートヘア程度まで回復することが一般的です。
- 髪質は一時的に変わる場合がありますが、2年ほどで元の髪質に近づくことが多いとされています。
脱毛前からできる準備
- 髪をあらかじめ短めにカットしておくと、抜け落ちが目立ちにくく、手入れも楽になります。
- 髪が抜け始める時期を想定して、帽子やスカーフ、かつらなどの準備をしておくと安心です。
頭皮と髪を守るケア方法
1. 頭皮を清潔に保つ
- 抗がん剤の影響で頭皮が炎症を起こすことがあります。
- 刺激の少ないシャンプーを選び、指の腹でやさしくマッサージするように洗うことが大切です。
2. シャンプーのポイント
- 洗う前にぬるま湯で2分ほどすすぐだけで7割の汚れは落ちるといわれています。
- シャンプーはしっかり泡立ててから頭皮にのせましょう。
- 洗い流す際は熱すぎないぬるま湯で。
- ドライヤーは冷風を使い、頭皮を完全に乾かして雑菌の繁殖を防ぎます。
3. 避けた方がよいこと
- 脱毛中はリンスやトリートメントは刺激になりやすいため控えましょう。
- パーマやカラーは頭皮に強い刺激を与えるため、必ず主治医に相談してください。
脱毛後の工夫
- 髪がなくなっても頭皮の清潔は重要なので、シャンプーは継続しましょう。
- 枕や衣服についた抜け毛は、コロコロ(粘着テープ付きローラー)で簡単に掃除できます。
- コットン製の柔らかいキャップをかぶると抜け毛の散らばりを防ぎ、頭皮の保護にも役立ちます。
かつら・帽子の活用法
かつらの選び方
- 用途・予算・使用期間を考慮して、自分に合ったものを選びましょう。
- 完全オーダーメイドから既製品まで幅広くあります。
- 抜ける前に専門店で相談すると、以前の髪型や色に近いものを選びやすいです。
- サイズ調整ができるものやセミオーダーがおすすめ。
髪型の工夫
- もとの髪型を再現するのもよし、思い切って今までと違う髪型を楽しむのもよし。
- 「せっかくなら新しい自分を楽しもう」という気持ちで選ぶ方も多いです。
価格帯
- 安価なものは5,000円程度から、質の高いものは数十万円するものまで。
- 人毛か人工毛かによって扱い方も変わるため、購入時に手入れ方法やアフターケアについて確認しておきましょう。
脱毛と向き合うために
脱毛は見た目の変化だけでなく、心理的なダメージも伴う副作用です。
しかし、髪は時間とともに再生します。
「抜けるのは一時的なこと」
「今は頭皮を守る期間」
そう考えることで、少し気持ちが楽になるかもしれません。
帽子やスカーフでおしゃれを楽しむ方もいれば、かつらで以前と同じスタイルを選ぶ方もいます。どんな方法を選ぶかは自分次第です。
まとめ
- 脱毛は抗がん剤治療に伴う一時的な変化。
- 抜け始めは投与後2~3週間、回復はおおむね8か月~1年。
- 頭皮ケア(清潔・刺激を避ける・乾燥させる)が大切。
- かつらや帽子を上手に取り入れると、日常生活の安心につながる。
治療中の見た目の変化はつらいですが、決して一人で抱え込まず、医療スタッフや家族、同じ経験を持つ仲間に相談することも大切です。
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