抗がん剤治療の副作用のひとつに末梢神経障害があります。
末梢神経とは、脳や脊髄(中枢神経)から全身に広がる細い神経で、感覚・運動・自律神経の3種類があります。
薬の影響で神経がダメージを受けると、しびれや痛みなどが現れます。完全に防ぐことは難しいものの、早めの対処と日常の工夫で悪化を防ぐことが可能です。
主な薬剤と症状の特徴
- パクリタキセル/アブラキサン
手袋や靴下で覆われる範囲にしびれや痛みが出やすい。1回の投与量が多いほど発症リスクが高まり、回数を重ねると頻度も増します。 - ドセタキセル
上記と似た症状ですが、発生率は低め。 - オンコビン/ナベルビン/エクザール
指先の感覚鈍化やピリピリ感、つま先が下がる、歩行のしづらさなど。細かい作業(ボタンかけ等)が難しくなることも。進行すると筋力低下や転倒の危険あり。 - ハラヴェン
手足のしびれ、感覚低下、力が入りにくいなど。比較的まれですが、投与後1週間ほどで出る場合があります。 - エルプラット(オキサリプラチン)
【急性】投与から2日以内に出現、2週間ほどで回復。冷たい物で誘発されやすく、約9割に発症。
【慢性】治療継続による薬の蓄積で神経障害が進行。
→ 冷たい食べ物や飲み物、冷気・冷たい物への接触は避けましょう。 - シスプラチン
手足の先にしびれや痛み。累積投与量が増えると70%以上に発症。 - カルボプラチン
症状はシスプラチンに似ますが、頻度も重症度も低め。
日常生活でできるケア
1. 血流を促す(ただし無理はしない)
- 手足を保温して症状が和らぐことも。
- 入浴時は強くこすらず、やさしくマッサージ。難しければグーパー運動でもOK。
- きつい靴下や小さすぎる靴、時計・ブレスレットなどは血流を妨げるため避けましょう。
2. 冷えを避ける
- 冷たい飲食物を控える。
- 手洗いや洗顔はぬるま湯で。
- エアコンの冷風や冷たい床への直触れに注意。
3. 転倒・やけど防止
- 感覚が鈍いと火傷の危険あり。鍋つかみや水温計を活用。
- 段差や階段では足を高く上げて歩き、足元を確認。
- 滑り止めマットや敷物の除去も有効です。
我慢せず、早めに相談を
末梢神経障害は放置しても自然に改善することは少なく、場合によっては薬の減量や中止が必要です。
症状を和らげる薬もあるため、「気のせい」と思わず、早めに医療スタッフに伝えることが大切です。
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