がんの治療を受けていると、「口の中が痛い」「ものを食べるとしみる」「話すのもつらい」と感じることがあります。これは治療の副作用によって起こる口内炎が原因かもしれません。
化学療法や放射線治療による口内炎は、見た目ではわかりづらい症状ですが、食事や会話に影響するため、生活の質に大きく関わります。
今回は、がん治療中に起こりやすい口内炎の原因や、できるだけ快適に過ごすための予防・対処法をやさしく解説します。
■ どうして口内炎ができるの?
がん治療中の口内炎は、主に次の2つの理由で起こります。
- 抗がん剤が直接、口の中の粘膜にダメージを与える
- 白血球が減少して、口の中の細菌に感染しやすくなる
こうした影響により、抗がん剤を投与してから2~10日後くらいに症状が現れやすく、白血球が回復してくると自然に良くなっていきます。ただし、回復までには2~3週間ほどかかることもあります。
■ 特に注意が必要な治療とは?
以下のような治療を受けている場合は、口内炎のリスクが高くなるため、早めのケアが大切です。
- 大量の抗がん薬を使う治療
- 全身への放射線照射(造血幹細胞移植の前など)
- 頭頸部がんや食道がんなど、口や喉まわりに放射線と抗がん剤を併用する治療
どの治療で特に注意が必要か、詳しくは医療スタッフに確認しましょう。
■ 口内炎のサインを見逃さないで
口内炎ができると、次のような症状が現れます。
- 口の中の痛みや違和感
- 粘膜が赤くなってはれぼったくなる
- ただれ、潰瘍、出血がみられることも
「食べるのがつらい」「しみる」「会話が億劫」など、いつもと違う口の変化に気づいたら、早めにケアを始めましょう。
■ 口内炎を予防するには? 〜毎日のケアが鍵〜
口内炎はできてから治すよりも、できるだけ予防することが大切です。予防のポイントは、「清潔」と「保湿」です。
① お口を清潔に保つケア
▷ 歯磨きの工夫
- 1日3回、やさしく歯磨きを行いましょう。
- 歯と歯ぐきの境目を、柔らかい毛先の歯ブラシで小刻みに磨きます。
- 痛みがあるときは、超軟毛ブラシやスポンジブラシがおすすめです。
▷ 歯磨き粉は必要?
- 泡立ち成分が粘膜を刺激することがあるため、使用を控えるか、使わずにブラッシングだけでもOKです。
▷ 舌のお手入れも忘れずに
- 舌苔(ぜったい:舌の汚れ)がある場合は、舌ブラシやスポンジブラシを使い、奥から前に一方向で軽くこすって汚れを取りましょう。
▷ 歯科でのチェックも大切
- 抗がん剤を始める前に歯科を受診して、虫歯や歯周病の治療、義歯の調整などを済ませておくと安心です。
- 治療中の受診は、主治医の許可を得てから行いましょう。
② お口の保湿で粘膜を守る
がん治療中は、薬の影響で口の中が乾燥しやすくなります。乾燥は痛みや炎症を悪化させる原因になるため、こまめな保湿が大切です。
▷ うがいでしっかり潤す
- 生理食塩水、処方されたうがい薬、市販の保湿スプレーなど、刺激の少ないものを使いましょう。
- 最低でも1日3回、できれば**2時間おき(1日8回程度)**が理想です。
▷ 氷でお口を冷やす方法も
- 点滴中に氷をなめることで、抗がん剤による口内炎を予防できる場合があります。
- 対象となる治療法については、看護師に確認してみてください。
■ 口内炎ができたらどうする?
もし口内炎ができてしまった場合は、次のような対策で悪化を防ぎ、痛みを和らげることができます。
- やわらかく、刺激の少ない食事に切り替える(例:おかゆ、スープ、ゼリーなど)
- 消炎・修復作用のあるうがい薬(例:アズノールなど)を使う
- デスパ(抗炎症薬)、アフタッチ(粘膜保護シール)などを使うことも
- 痛みが強い場合は、局所麻酔入りの薬を処方してもらうことも可能です
いずれも、自己判断せずに医師や看護師に相談してから使用してください。
■ おわりに
口内炎は目に見えないけれど、日常生活に大きな影響を与えるつらい副作用です。ですが、予防と早めのケアで負担を減らすことができます。
「いつもと違う」と感じたら、我慢せずに医療スタッフに相談しましょう。
お口のケアをしっかり行うことで、治療期間を少しでも快適に過ごせるようにサポートします。
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