がんの治療中、「なんとなく体が重い」「すぐに疲れてしまう」「やる気が出ない」と感じることはありませんか?
こうした だるさ(=倦怠感) は、がん患者さんの多くが経験する症状のひとつです。
倦怠感は見た目には分かりづらいぶん、周囲に理解されにくいこともあり、ご本人にとっては大きなストレスになります。今回は、化学療法中の倦怠感の特徴や、日常生活でできる工夫について紹介します。
■ 倦怠感はなぜ起こるの?
倦怠感の原因はひとつではありません。
がんそのものの影響、化学療法や放射線治療の副作用、心のストレス、栄養状態、貧血、睡眠の質など、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。
特に化学療法を受けている場合、治療後2~3日が最もつらく感じやすく、次の治療までに少しずつ回復していくことが多いです。ただし、治療回数を重ねるにつれて疲れやすさが増していくケースもあります。
■ 倦怠感のサインとは?
倦怠感といっても、単なる「疲れ」とは少し違います。以下のような症状がある場合、それは「治療にともなう倦怠感」かもしれません。
- 体が重く感じる、起き上がるのがつらい
- 集中力が続かない、物忘れが増えた
- イライラしやすくなった、気分が沈む
- これまで楽しめていたことに興味が持てない
■ 今日からできる!倦怠感への5つの対策
① 自分の体調を観察しよう
倦怠感は人によって出るタイミングや強さが異なります。
「いつ頃だるさが出るのか」「どんなときに悪化しやすいのか」などを日記などに記録してみましょう。次の治療の前後で比較してみることで、対策のヒントが見えてきます。
② 活動と休息のバランスを整える
「頑張りすぎない」が倦怠感対策の基本です。
疲れを感じる時間帯には休憩を入れ、比較的調子が良い時間に家事や用事を済ませるなど、自分の1日の“波”を意識して行動しましょう。
- 毎日の散歩や簡単な体操など、軽い運動を取り入れると疲れの軽減に効果的です
- 昼寝は30分以内にとどめると、夜の睡眠への影響が少なくおすすめです
- 家族や周囲の人に協力をお願いすることも大切なセルフケアです
③ 気分転換でこころもリセット
倦怠感には精神的な要素も大きく関わっています。
心が疲れているときには無理に動こうとせず、「自分が心地よいと思える時間」を持つことも大切です。
- やさしい音楽を聴く
- 深呼吸や瞑想、アロマを使ったリラックスタイム
- 趣味に没頭したり、自然に触れたりする
- 同じ立場の人と話せる「がんサロン」や患者会への参加も、安心感につながります
④ 食事と水分をしっかりと
治療によって食欲が落ちたり、味覚が変化したりすることもありますが、体に必要なエネルギーと水分はしっかり補いたいところです。
- 消化の良い栄養価の高い食べ物(例:おかゆ、スープ、豆腐など)を中心に
- 脱水を防ぐため、こまめな水分補給も忘れずに
- 栄養面に不安がある場合は、病院の管理栄養士への相談もおすすめです
⑤ 血流を促してリフレッシュ
体を温めたり、軽く動かすことで血液やリンパの流れが良くなり、疲れの軽減につながることがあります。
- 40℃程度のお湯にゆったり入浴(足湯でもOK)
- 肩や手足のストレッチ、軽いヨガなども効果的
- 無理のない範囲で、毎日の習慣に取り入れてみましょう
■ 最後に
倦怠感は、「目に見えない副作用」として、がん治療を受けている方を静かに苦しめるものです。でも、少しの工夫と周囲の協力で、毎日の過ごし方は変わっていきます。
「頑張りすぎず、自分をいたわる」ことが、回復への第一歩です。つらい時は、遠慮なく医療スタッフにも相談してくださいね。
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