
「この副作用って、本当に大丈夫なんでしょうか?」
化学療法を受ける患者さんから、こんな声を聞くことは珍しくありません。
私は病院薬剤師として、がん薬物療法に携わる中で、患者さんの不安や迷いに向き合う場面に何度も立ち会ってきました。
抗がん剤は“正しく使ってこそ”効く
抗がん剤は効果が期待できる反面、副作用も強く出ることがあります。
投与量は体表面積(体の大きさ)や体重、肝臓・腎臓の機能、併用薬などによって一人ひとり調整が必要です。
ある日のこと。
60代の女性患者さんにS-1が処方されていましたが、腎機能(クレアチニン クリアランス)が落ちてきているのを確認。
医師に報告し、S-1の減量を提案。
「そう言われてみれば食欲がないと言ってた」と看護師も同調し、投与量が変更されました。
薬剤師の“気づき”が治療継続に結びついた瞬間でした。
「薬が怖い」そんな声に向き合う
ある外来日、若い女性患者さんからこんな言葉をもらいました。
「もう脱毛もつらいし、吐き気も我慢してて、薬を続けるのが怖くなってきました」
私はその場で、制吐薬の見直しを提案し、スケジュールの変更や在宅支援についても説明。
最後に「それでも辛かったら、治療の選択肢は他にもありますよ」と伝えると、彼女は少し涙ぐみながらこう言ってくれました。
「薬の話なのに、こんなに安心できたのは初めてでした」
薬の説明だけではなく、患者さんの「気持ち」に寄り添えるのが、化学療法に関わる薬剤師の強みだと感じています。
医師や看護師と“ぶつかる”こともある
もちろん、すべてがうまくいくわけではありません。
「それは薬剤師の仕事なのか?」と言われたこともありました。
でも私は、患者さんが安心して治療を受けられるなら、意見が衝突してでも議論を重ねるべきと思っています。
ある看護師さんから、「最近、あの患者さん副作用の訴えが増えてますよ」と相談されたとき。
私は医師に連絡し、副作用対策の強化を提案。
後日その患者さんが「今はずいぶん楽です」と笑顔で話してくれました。
学びに終わりはない。でも、それが面白い
新しい抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬……
次々と新しい治療が登場する中で、常に学び続ける必要があります。
それでも、「この薬を使ってよかった」「治療を続けられてよかった」という患者さんの声がある限り、
私はこの現場で、薬剤師として関わり続けたいと思っています。
まとめ:薬剤師は“薬の専門家”である前に、患者さんの味方でありたい
化学療法の現場には、治療の難しさ、患者さんの不安、チームの葛藤、そして小さな希望が詰まっています。
そのすべてに寄り添い、薬でつなぐ役割こそ、薬剤師にしかできない仕事です。
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